8/06/2015

ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ*Vol.5 再会・・☆



『なに〜〜あんたたち遅かったわね!
2階でブルーノが隣のレズビアン集団に絡まれてるのよ!!』

約束していたパブへ入るとカウンターでオーダーしていた

Leeにいきなり怒られた。

『それで何飲む?トリート(おごり)するわよ!』

再会した喜びよりも先に、マシンガンのような

Leeの声が飛んで来る・・。

『emy〜〜あんた、変わんないわね?
いや・・変わったわ。
老けたんとちゃう??』

(おおきなお世話や!!)

『それで何?何飲むのよ〜早く言いなさい!』

(ええ〜〜??っと
ワンパイントのビールで良いわ!)

ユーロスターがキングスクロス駅に到着した後、

ゲートにまずイギリス時代から苦肉を共にした親友が

出迎えてくれた。

彼女は大学を中退してイギリスへ渡り、

それからず〜〜〜っとイギリスで骨を埋めている。

今更、帰った所で・・。

そんな彼女は感覚も完全にイギリス思考になっていた。

今はロンドンから列車で1時間30分の郊外へ住んでいるので

今回、emyのために2日間、市内の方へ出て来てくれた。

そして最初のおばちゃん口調で喋るLeeも

長年連れ添ったブルーノと去年結婚して、

市内から少し離れた場所に家も購入している。

そう・・イギリスは同性婚が認められている。

十数年前、知り合った時のLeeは

ヘアメイクと美容師の仕事をしていた。

今では某有名サロンのカラーリストとして

めっちゃ出世している。

口が悪いけど・・腕は確か・笑。

待ち合わせ場所は大英博物館のある 

『Holborn(ホルボーン)駅』近くのパブだった。

この日は『GAY PRIDE 』と言う大々的なお祭りの日と

重なっていたので

通りでは既に沢山のGAYたちが会場のSOHO(中華街)へ向かって

歩いていた。

ワンパイントのビールを持ちながら2階へ上がると

外の騒ぎとは対照的に落ち着いた雰囲気の部屋が数個あった。

そして奥の部屋へ進むと、

ブルーノが隣のレズビアン集団と大声で何かを喋っていた。

ブルーノも、昔はバイク便の仕事をしていたけれど、

今では安全に気遣ってBBC(国営放送)に転職したらしい・・。

2人ともハチャメチャのようで凄く堅実!

見習うべき所だ・笑。

 

  (ブルーノ!!久しぶり!!!)

おばちゃんのLeeと違ってブルーノは優しくて包容力がある。

正直、この2人の関係が長年良好に続いているのは、

ブルーノの忍耐の上に成り立っているに違いない。

(Leeはそうだと認めないけれど・笑) 

『それで、何〜〜今、どんな写真撮ってるの?
ちょっと小耳に挟んだんだけど、ファッション写真を止めて、
錦鯉撮ってるんだって?
 あんた、昔から動く物を撮るのは上手かったから錦鯉なんて
ピッタリなんじゃないの?
ファッション写真のストーリー考えるのヘタクソだったもんね・笑』

(あはは・・相変わらずボロクソ言われる・・)

イギリスから日本に帰った後も

数回、テストシュートをしにロンドンへ行った。

ロンドンでは例え、日本人の無名カメラマンであったとしても

ポートフォリオを持ってモデルエージェンシーへ行けば、

無料で新人のモデルを貸してくれる。

ここは度胸だけが勝負で、

『エリート・モデルズ』『セレクト』『ストーム』

など、スーパーモデルたちが所属している

トップモデルエージェンシーの門を叩いた。

例えメディアで良く取り上げられる

有名なモデル事務所だとしても

新人は数名居て、彼女たちもまた

テストシュートの機会を待ち望んでいる。

なので、カメラマンとモデルの双方が気に入れば、

スケジュールを調整して撮影に入り

最終的にプリントまでして

モデルたちにあげるのだ。

それは彼女たちが今後、仕事が舞い込むかどうか

重要なポートフォリオとなる。

だから正直、中途半端な気持ちでは望めない。

そしてカメラマンは総合プロデューサーのようなもの・・。

メイク・洋服・ロケーション・・

全て考えなければならない。

短期滞在の中でロケーションを見つけ、

撮影〜プリントまで行かなければならないので

正直、大変だ。

でも、イギリスでテストシュートする事は

自分にとって必要な事だと思っていたし、

テンションも日本に居る時以上にあがるので

帰国後も数回、ロンドンへ足を運んでいた。

そしてヘアメイクはLeeに頼んでいた。

抜群のセンスを持つLeeは、

変に日本人気質が出るemyに何時もイライラしていた。

選んだモデルの写真を見せて、

どのようなストーリーを作って

写真を撮るのか、事細かく聞いて来る。

自分なりに考えたストーリーを伝えると

『何それ?そんなつまらないストーリーしか
考えられない訳??
そんなんじゃ、メイク出来るはずないでしょ!』

と何時も怒っていた。

『こんな服で撮るの?
ダサイ!』

メイクだけでなくスタイリングにも檄を飛ばされた。

あまりの悔しさに涙を流しながら撮影をした事もあったけれど、

出来上がったプリントをエージェンシーへ持って行くと

『パーフェクト!素晴らしい仕上がりだわ!』

とマネージャーに褒められる事しか無かった。

悔しいけれど、Leeの言う事はごもっとも・・。

今でもあの時の経験はとても貴重だったと思う。

逆に辛口のLeeから、

『ドキュメンタリーを撮らせれば最高よね。
あんたは動いている物の一瞬をおさえるのが上手いのよ!』 

と言われると、心の底から自信を持つ事が出来た。

      
 そしてLeeと一緒に組んだテストシュートのおかげで

東京時代、数多くのファッション&ビューティーページの仕事を

持つ事が出来た。

テストシュート以外では、喧嘩をする事もなく

色んな人生の話をしていた。

ゲイならではの感覚でemyの本質を見抜き、

恋愛から仕事に至るまで色々と感じる事を言ってくれる。

それがまた占い以上の的中率で驚く事もしばし・笑。

でもここ数年はお互いのスケジュールが合わなくて

長い年月が流れてしまっていた。

数十年ぶりにLeeに会ったけれど、

全く変わっていない。

強いて言えば、年を重ねた分、

おばちゃん度があがっているように思えた・笑。

『何食べに行く〜〜?
この近くに美味しいタイ料理屋があるわよ!』

既にパブで散々ビールを飲んでいたけれど、

その足でSOHO近くのタイ料理屋へ移動した。

夜になると街中、パレードと祝杯で大盛り上がりだった。

色んなゲイに絡まれてもみくちゃになりながら

やっとレストランに到着。

(ところで、ブルーノとパレード行かなくて良いの?)

もしかしてemyたちに気を使ってお祭りに行かないのかと思いきや

Leeは、

『そんなん、どーでも良いのよ。
兎に角、久しぶりに会えたんだから!
こっちが大事。
まだ、あんたに色々お説教しなきゃならないんだから・・』

と笑いながら言った。

お説教と言うけれど、Leeの言葉は魔法のように

心の中へ入って行く。

ワインもボトルで頼んで

酸っぱ甘辛いタイ料理をつつきながら、

話題はつきる事が無い。

ロンドンではナイト・バスが走っているので

時間を気にせず遊べるのが嬉しい所だ。

『あ!も〜そろそろ行かないと
終電に間に合わないわ〜!
今日は久しぶりに会えて良かった!
元気でね〜!!』

とLeeとブルーノはまだまだ盛り上がっている

パレードの中へと消えて行った。

昔ならこのままクラブへ繰り出して

朝まで踊り明かしていただろう。

やはりある程度、歳を重ねて落ち着いたのだろうか・笑?

久しぶりにチャーリング・クロス駅の地下にある

お気に入りのクラブへ足を運びたいと一瞬、思ったけれど、

パリへ戻った後が本番!

此処は無理をせずやはりホテルへと向かう事にした。

〜to be next〜

 

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